|
『財産がないから遺言なんて・・・』とおっしゃる方がいます。確かに遺言書を書かなくても、相続人間で上手に遺産分割協議を行って、スムーズに相続手続を行っているお家もあります。しかし、相続人間で話し合いが進まず、調停・裁判に発展するケースもあります。特に財産のほとんどがお金ではなく、土地や建物だった場合は登記なども含めて相続手続が複雑で上手に分けるのも、法定相続で遺産分割するのも難しいです。後で相続人間の財産争い防ぐためにも遺言書は良い手段で、相続・遺産分割協議が円満に進むには、遺言書の存在が1番です。
<遺言書の種類>
1・自筆証書遺言→自筆で書く遺言 2・公正証書遺言→公証役場で公証人に承認になってもらう遺言 3・秘密証書遺言→公証役場で内容を秘密にして行う遺言
<遺言能力>
遺言は誰でも書けるわけではありません。遺言するときの年齢が15歳に達していなければなりません 痴呆など判断能力に欠ける者の遺言も無効です
<問題のある遺言>
- 相続人の遺留分を侵している遺言
- 遺言者を脅したり、騙したりしてする遺言
- 公序良俗に反する遺言
- 言いたいことが伝わらない理解し難い遺言
- 遺族を中傷するような言葉が入っている遺言。後々、裁判に発展する可能性がある
- 押印がない遺言
- 夫婦が共同でする遺言
- 日付がない遺言
- 遺言での離婚。離婚は共同でするものなので単独行為の遺言では出来ない
- 遺言によって指定された財産がないとき
<遺言でなし得る事項>
- 遺贈(身の回りの世話をしてくれた人などに財産贈与)
- 婚姻外の子の認知(遺言によっても認知可)
- 相続人の廃除、廃除の取消(生前行為でも可能)
- 相続人の指定。指定の委託
- 遺産分割の禁止
- 遺産分割の方法の指定、指定の委託
- 遺言執行者の指定
- 未成年後見人・未成年後見監督人の指定
- 祭司主宰者の指定
<遺言をした方が良い場合>
- 子ども達に配偶者の面倒をみてほしい。遺言は財産だけとは限らない
- 胎児を認知して財産をあげたい。胎児でも遺言で認知可
- 配偶者に全財産を遺したい(ただし、遺留分に注意)
- 負担付贈与(何かをしてくれる代わりに財産をあげるなど)
- 愛人の子に財産をあげたい
- 孫、甥、姪などに財産をあげたい
- 息子の妻に財産をあげたい
- 誰にも気付かれずに生命保険の受取人を変更したい
- 子ども達が異母兄弟であるとき
- 財産が金銭だけでなく、土地、建物、有価証券など複雑なとき
- 妻の連れ子に財産をあげたいとき(養子縁組ができないときなど)
- 兄弟に相続させたくないとき(兄弟には遺留分がないので、遺言で十分効果はある)
<自筆証書遺言>
- 自分自身で遺言の内容、日付、氏名を必ず自筆で書く
- 氏名の横に押印する(押印は認印可)
- 署名
- 代筆は無効
- 書式は自由
<自筆証書遺言のメリット・デメリット>
一人で簡単に作れて、自宅でできるので煩わしさもありません。ただし、方式違反(日付、押印の不備)や問題のある遺言(遺留分侵害)など、無効になるケースも多い。また、紛失・偽造・変造のおそれがあるので保管に気を使わなければなりません。それでも誰にもわからない場所に保管しておいたら、せっかく遺言書を書いても意味がありません。また、自筆証書遺言はその遺言書を有効にするには、家庭裁判所で検認の手続が必要になります
※検認とは家庭裁判所でその遺言書が遺言者が書いたものかどうか調べることです
<公正証書遺言>
1・遺言者が公証人に口授して、公証人が遺言者の口授を筆記して、これを遺言者、証人に読み聞かせ、遺言書を作成する
2・証人の立会いが必要(2名)です。証人は未成年、推定相続人、直系血族など、なれない人がいるので注意が必要(関係のない第三者なら問題ない)。証人が途中で立ち去ったら方式違反になる
3・公正証書遺言の添付書類 遺言者本人の印鑑登録証明書 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本 財産を相続人以外に遺したいときはその者の住民票の写し 財産の中に土地や建物がある場合や公証人が指定したときは、指定の添付書類を用意する
<秘密証書遺言>
これは、自筆証書遺言と公正証書遺言を合わせたような遺言です。遺言者が遺言書を作成し、その証書に署名し押印することが必要で、自筆である必要はなく日付の記載も不要。遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章でこれに封印することが必要で、遺言者が公証人1人及び証人2人以上の面前に封書を提出して、それが自己の遺言書であること、並びにそれを書いた者の住所、氏名を述べることが必要な遺言です。遺言の存在は明確にしつつも、生前はその内容を秘密にしておきたい場合に使われます。
<遺言の撤回>
◇自筆証書遺言 遺言者を破棄又は遺言を撤回する旨の遺言書を作成する
◇公正証書遺言 遺言を撤回する旨の遺言書を作る。原本が公正証書役場で保管されているので、手元にある遺言書の正本や謄本を破棄しても撤回にはならない。ただ、公正証書で遺言書を作成しても、撤回は自筆証書遺言でできる
◇秘密証書遺言 遺言書を破棄
※公正証書で遺言書を作成した場合、撤回はどんな遺言方式でもかまわないのですが、証人の立ち会う公正証書でする方がより安心です。
<遺贈>
遺贈とは、遺言によって一方的な思いを意思表示する行為です、遺言者の単独行為になります。遺贈を受ける方を受遺者、遺贈する方を遺贈義務者と言います。遺贈義務者は相続財産管理人がなりますが、遺言執行者を決めてあれば遺言執行者も遺言義務者になります。遺贈は遺言者の単独行為なので受遺者は遺贈を拒否する権利があります。もらいたくないものをもらっても仕方がないので、そういう場合は遺贈を拒否できるのです。また、受遺者が承認又は放棄しない場合は遺言義務者や利害関係人は相当期間を定めて承認又は放棄の意思確認を受遺者に催告することができます。相当期間内に承認又は放棄しない場合は遺贈を承認したとみなされます。遺贈は条件付でなされる場合はもあるので、受遺者遺言書をよく確認して遺贈を受けるつもりがない場合は早めに放棄の意思表示をした方が良いでしょう。
※胎児も受遺者に含まれます。また、相続欠格者は受遺者にはなれません。相続欠格者は被相続人だけでなく、他の相続人に違法行為をした場合も相続欠格要件に当てはまります。遺言書の存在というのは相続手続きにとって大変重要な存在になります。
|